目次

  1. 鍼の「響き」とは何か
  2. なぜズーンと重だるく感じるのか
  3. 響きはどの神経が関与しているのか
  4. 脊髄と脳で何が起きているのか
  5. 下行性痛覚抑制系と内因性オピオイド
  6. 脳波と自律神経の変化
  7. 響きは効いている証拠なのか
  8. 安全性と臨床的意味
  9. まとめ

1. 鍼の「響き」とは何か

鍼治療を受けた際に、

・ズーンと奥に入る感覚
・重だるさ
・広がる感じ
・電気が走るような感覚

を経験することがあります。

この感覚は東洋医学では「得気(とっき)」と呼ばれます。

しかし現代医学的に解釈すると、

鍼刺激によって生じる神経生理学的反応と捉えることができます。

響きは異常な痛みではありません。
神経系が反応している現象です。


2. なぜズーンと重だるく感じるのか

鍼が皮膚や筋膜、筋肉に到達すると、
機械受容器や侵害受容器が刺激されます。

その結果、神経信号が発生します。

特に関与すると考えられているのが、

  • Aδ線維(速く鋭い刺激を伝える)
  • C線維(遅く鈍い刺激を伝える)

C線維が関与すると、
鋭い痛みではなく、

鈍く、広がるような感覚

として知覚されやすくなります。

これが「ズーン」と表現される理由の一つです。


3. 響きはどの神経が関与しているのか

鍼刺激は末梢神経を介して、

  1. 脊髄後角へ伝達
  2. 上行路を通り視床へ
  3. 大脳皮質へ

と伝わります。

この過程で、

  • 島皮質(内受容感覚の統合)
  • 前帯状皮質(情動と痛み)
  • 二次体性感覚野

などが関与すると報告されています。

響きは、

末梢神経入力と中枢処理の統合結果

として生じます。


4. 脊髄と脳で何が起きているのか

脊髄後角では、

入力された刺激が調整されます。

ここで重要なのが、

ゲートコントロール機構

です。

さらに刺激が脳へ到達すると、

中脳水道周囲灰白質(PAG)が活性化する可能性があります。

PAGは下行性痛覚抑制系の中心です。

ここが作動すると、

脳から脊髄へ抑制信号が送られます。

結果として、

痛みや違和感が軽減されることがあります。


5. 下行性痛覚抑制系と内因性オピオイド

鍼刺激により、

  • エンドルフィン
  • エンケファリン

などの内因性オピオイドが分泌される可能性が示唆されています。

これらは体内で生成される鎮痛物質です。

つまり響きは、

鎮痛回路が作動し始める前段階の感覚体験

とも考えられます。


6. 脳波と自律神経の変化

一部の研究では、

鍼刺激後に

  • β波の低下
  • α波の増加

が観察されています。

これは、

緊張状態からリラックス状態への移行を示唆します。

また、自律神経バランスの変化も報告されています。

響きは、

局所刺激ではなく、

脳全体のネットワーク変化と連動する現象

である可能性があります。


7. 響きは効いている証拠なのか

ここは重要な点です。

響きがある=効果がある
響きがない=効果がない

とは言えません。

World Health Organizationは鍼灸の適応について報告していますが、
効果の発現と感覚の強さが比例するとは限りません。

響きは神経反応の一形態であり、

治療効果はその後の中枢調整に依存します。


8. 安全性と臨床的意味

通常の適切な施術下で生じる響きは、

神経反応の範囲内です。

ただし、

鋭い痛みや持続的な違和感がある場合は
施術者へ伝えることが重要です。

臨床的には、

響きそのものよりも、

  • 施術後の可動域
  • 痛みの変化
  • 自律神経症状の変化

が評価指標となります。


9. まとめ

鍼の響きは、

  • 末梢神経刺激
  • 脊髄での調整
  • 脳幹・視床での統合
  • 下行性痛覚抑制系の作動

が関与する神経生理学的現象です。

異常ではありません。

強さよりも重要なのは、

その後に脳と自律神経がどのように変化するか

です。

響きは、

身体と脳が反応しているサインの一つと考えられます。

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