
目次
- 鍼の「響き」とは何か
- なぜズーンと重だるく感じるのか
- 響きはどの神経が関与しているのか
- 脊髄と脳で何が起きているのか
- 下行性痛覚抑制系と内因性オピオイド
- 脳波と自律神経の変化
- 響きは効いている証拠なのか
- 安全性と臨床的意味
- まとめ
1. 鍼の「響き」とは何か
鍼治療を受けた際に、
・ズーンと奥に入る感覚
・重だるさ
・広がる感じ
・電気が走るような感覚
を経験することがあります。
この感覚は東洋医学では「得気(とっき)」と呼ばれます。
しかし現代医学的に解釈すると、
鍼刺激によって生じる神経生理学的反応と捉えることができます。
響きは異常な痛みではありません。
神経系が反応している現象です。
2. なぜズーンと重だるく感じるのか
鍼が皮膚や筋膜、筋肉に到達すると、
機械受容器や侵害受容器が刺激されます。
その結果、神経信号が発生します。
特に関与すると考えられているのが、
- Aδ線維(速く鋭い刺激を伝える)
- C線維(遅く鈍い刺激を伝える)
C線維が関与すると、
鋭い痛みではなく、
鈍く、広がるような感覚
として知覚されやすくなります。
これが「ズーン」と表現される理由の一つです。
3. 響きはどの神経が関与しているのか
鍼刺激は末梢神経を介して、
- 脊髄後角へ伝達
- 上行路を通り視床へ
- 大脳皮質へ
と伝わります。
この過程で、
- 島皮質(内受容感覚の統合)
- 前帯状皮質(情動と痛み)
- 二次体性感覚野
などが関与すると報告されています。
響きは、
末梢神経入力と中枢処理の統合結果
として生じます。
4. 脊髄と脳で何が起きているのか
脊髄後角では、
入力された刺激が調整されます。
ここで重要なのが、
ゲートコントロール機構
です。
さらに刺激が脳へ到達すると、
中脳水道周囲灰白質(PAG)が活性化する可能性があります。
PAGは下行性痛覚抑制系の中心です。
ここが作動すると、
脳から脊髄へ抑制信号が送られます。
結果として、
痛みや違和感が軽減されることがあります。
5. 下行性痛覚抑制系と内因性オピオイド
鍼刺激により、
- エンドルフィン
- エンケファリン
などの内因性オピオイドが分泌される可能性が示唆されています。
これらは体内で生成される鎮痛物質です。
つまり響きは、
鎮痛回路が作動し始める前段階の感覚体験
とも考えられます。
6. 脳波と自律神経の変化
一部の研究では、
鍼刺激後に
- β波の低下
- α波の増加
が観察されています。
これは、
緊張状態からリラックス状態への移行を示唆します。
また、自律神経バランスの変化も報告されています。
響きは、
局所刺激ではなく、
脳全体のネットワーク変化と連動する現象
である可能性があります。
7. 響きは効いている証拠なのか
ここは重要な点です。
響きがある=効果がある
響きがない=効果がない
とは言えません。
World Health Organizationは鍼灸の適応について報告していますが、
効果の発現と感覚の強さが比例するとは限りません。
響きは神経反応の一形態であり、
治療効果はその後の中枢調整に依存します。
8. 安全性と臨床的意味
通常の適切な施術下で生じる響きは、
神経反応の範囲内です。
ただし、
鋭い痛みや持続的な違和感がある場合は
施術者へ伝えることが重要です。
臨床的には、
響きそのものよりも、
- 施術後の可動域
- 痛みの変化
- 自律神経症状の変化
が評価指標となります。
9. まとめ
鍼の響きは、
- 末梢神経刺激
- 脊髄での調整
- 脳幹・視床での統合
- 下行性痛覚抑制系の作動
が関与する神経生理学的現象です。
異常ではありません。
強さよりも重要なのは、
その後に脳と自律神経がどのように変化するか
です。
響きは、
身体と脳が反応しているサインの一つと考えられます。
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