― 脳血流の変化から見える一つの可能性 ―


こんにちは、院長の山元です。

今回は、うつ病に対する鍼灸についての論文をご紹介します。


鍼刺激で何が起きているのか

うつ病に対して鍼が有効である可能性は、これまでも報告されていますが、

実際に脳の中でどのような変化が起きているのかについては、
まだ明確でない部分も多くあります。


今回の研究では、

鍼刺激の前後で脳の血流(脳血流)がどのように変化するかが調べられています。


研究の概要

対象は、

・再発性うつ病の患者さん
・健康な方

です。


特定のツボ(LI4、PC6、ST36、LV3)に鍼を行い、

MRI(ASL-MRI)を用いて、

・刺激前
・刺激中
・刺激後

の脳血流を測定しています。


観察された変化

この研究では、

いくつかの脳領域において血流の変化が確認されています。


■ 前頭前野の血流増加

前頭前野は、

思考や判断、調整に関わる領域とされています。


鍼刺激後、

この領域の血流が増加し、

刺激後もその状態が持続する傾向が見られました。


■ 体性感覚野の血流増加

身体の感覚に関わる領域でも、

血流の増加が確認されています。


■ 扁桃体の血流低下

扁桃体は、

不安や恐怖などの感情に関係する領域です。


鍼刺激後には、

この領域の血流が低下する傾向が見られました。


■ 後帯状皮質の血流低下

後帯状皮質は、

内省や思考の反復に関わるとされています。


この領域でも、

血流の低下が確認されています。


どのような変化と考えられるか

これらの結果から、


不安や反応が強く出ていた状態から、
落ち着いて処理できる状態へ変化している可能性が示唆されています。



健常者との違い

健康な方と比較すると、

うつ病の患者さんでは、

・身体感覚に関わる領域
・思考に関わる領域

の活動がより強く見られる一方で、

感情や記憶に関わる領域の反応は抑えられる傾向がありました。


この研究から言えること

今回の研究は、

鍼刺激によって

脳の特定の領域の血流分布が変化する可能性を示しています。


ただし、

・対象人数が少ない
・探索的な解析である

といった点もあり、

今後の研究の積み重ねが必要とされています。


最後に

うつ病は、

単純にひとつの原因で説明できるものではありません。


身体の状態、生活のリズム、環境など、

様々な要素が関係していると考えられています。


今回のような研究は、

その中の一つの側面として、

脳の変化を捉えたものです。


こうした知見も含めながら、

それぞれの状態に合わせた関わり方を考えていくことが大切だと感じています。


いつもお読みいただきありがとうございます。