
― 医療鍼灸で考える脱毛と育毛の話 ―
はじめに:髪の悩みは、「体調の鏡」かもしれません
こんにちは。鍼灸院ひなたの山元大樹です。
もし、あなたがいま、
- 抜け毛や薄毛が気になる
- 髪が細くなってきた
- 育毛剤や薬に頼っているが不安がある
- ストレスや疲れで体も心も不調を感じている
そんな状態であれば、
それは「髪の問題」ではなく、
体からの深いメッセージかもしれません。
そして、そのサインに対して、鍼灸は自然で確かな選択肢になり得ます。
髪が抜ける/育たない ― その背景にある4つのメカニズム
髪の毛は、単なる見た目の問題ではなく、
体の内側で起こっている不調の結果として現れます。
ここでは、現代の研究で明らかになっている要因を整理します。
① 血流不足:毛根に栄養が届かない
髪は「血余(けつよ)」とも呼ばれ、血の余剰が育てるとされています。
現代医学でも、頭皮の血流が毛包に酸素と栄養を運ぶことが必須であると示されています【Zhou et al. 2015】。
② 自律神経の乱れ:成長スイッチが入らない
交感神経が優位な状態が続くと、末端血管は収縮し、毛根への血流が抑制されます。
円形脱毛症の患者では、自律神経のバランスが崩れていることが多いという報告もあります【Ulett et al., 1998】。
③ ホルモン変動:男性型/女性型脱毛の影にある変化
AGA(男性型脱毛)やFAGA(女性型)は、DHT(ジヒドロテストステロン)というホルモンの影響が知られています。
また、妊娠・出産・更年期などの女性ホルモンの急変期にも脱毛は起こりやすくなります。
④ ストレス:毛包の自己免疫異常を誘発
慢性ストレスによって分泌されるコルチゾールが、毛包の成長周期を阻害する可能性があるとする研究もあります【Arck et al., 2003】。
鍼灸の役割:薬では届かない、体の本来の力を呼び起こす
鍼灸は、これらの複合的な要因に対して、副作用なく多面的に作用することが大きな利点です。
✅ 血流改善
→ 鍼刺激により、局所の一酸化窒素(NO)産生が促進 → 毛細血管の拡張【Zhou et al.】
✅ 自律神経の調整
→ 百会、風池、内関などのツボで交感神経を鎮静、迷走神経優位へ【Ulett et al.】
✅ ストレスの軽減
→ 鍼灸施術によって血中コルチゾール(ストレスホルモン)が有意に減少【Eshkevari et al.】
✅ 睡眠・ホルモン分泌の改善
→ 睡眠も運動の一部であるという観点から肩甲骨や呼吸に対して施術を行い睡眠の質が向上 → 成長ホルモン分泌のサポート【Huang et al.】
最後に:髪の変化は、あなたが「頑張ってきた証」
薄毛や抜け毛は、見た目だけの問題ではありません。
そこには、あなたが無理をしてきた歴史、生活、感情が映っています。
鍼灸は、体の深いところに触れ、あなたの本来の育つ力を引き出す医療です。
髪からの声を、ちゃんと受け取る場所として。
私たちがお手伝いできたら幸いです。
【参考エビデンス】
- Zhou et al., “Acupuncture and microcirculation of the scalp”, Journal of Traditional Medicine, 2015
- Eshkevari et al., “Effects of acupuncture on stress-induced cortisol secretion”, J of Endocrinology, 2013
- Arck et al., “Stress and hair loss: a psychoneuroimmunological perspective”, Am J Pathol, 2003
- Ulett et al., “Autonomic nervous system changes during acupuncture”, Int J Neurosci, 1998
- Huang et al., “Effect of acupuncture on sleep quality”, Sleep Med Rev, 2011