
こんにちは。鍼灸院ひなたの山元大樹です。
「何を食べても味がしない」
「お味噌汁が水みたいに感じる」
「コーヒーが苦いというより、何か焦げたような味に思える」
味覚は、私たちの“幸せ”と深く結びついています。
食べる楽しみが減ると、食欲が落ち、気持ちも沈み、栄養状態も崩れます。
そして、家族や友人との「ごはんの時間」も、なんとなく色あせて感じられる。
味が感じられないことは、人生の彩りを一部失うことでもあるのです。
味覚障害とは?|分類と原因
味覚障害は、大きく以下の5つに分類されます。
- 味覚減退:味が薄く感じる
- 味覚消失:まったく味がしない
- 異味症:本来と違う味に感じる(甘いものが苦く感じるなど)
- 悪味症:何を食べてもまずく感じる
- 味覚過敏:味が強すぎて不快に感じる
主な原因
- 亜鉛不足:味蕾の再生に亜鉛は不可欠(亜鉛は体内に蓄積されない)
- 薬の副作用:降圧薬、抗生剤、抗がん剤など
- 神経障害:顔面神経、舌咽神経、延髄など
- ストレスや自律神経の乱れ:心因性味覚障害
- 加齢・口腔乾燥・喫煙習慣など
COVID-19と味覚障害|“後遺症”のひとつとして
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)でも、味覚障害が高頻度で報告されています。
- 約45%のCOVID-19罹患者が味覚異常を経験
(Spinato et al., JAMA 2020) - 数週間〜数ヶ月の長期持続型も多い
→ 特に嗅覚障害を伴うケースでは治癒に時間がかかる傾向 - 回復しても「味がぼやける」「変な味がする」などの後遺症が残る例も
このようなケースでは、嗅覚と同じく「神経の再生・伝達異常」が関わっていると考えられています。
鍼灸でできること|味覚回復への東洋医学的アプローチ
鍼灸は、「味を強くする」ための治療ではありません。
“味を感じられる身体”に戻していく治療です。
① 舌・顔面の血流と神経刺激
- 舌の両側や中央にあるツボへのアプローチで、顔面・舌咽・舌下神経を間接刺激
- 舌や口内の血流改善による味蕾再生のサポート
② 耳鍼療法(Auricular Therapy)
- 耳にある「口腔」「神門」「脳幹」などの反射区に鍼を用いることで、
味覚伝導路に関与する領域を間接的に活性化 - ScienceDirectでは、化学療法後の味覚異常に対して耳鍼の有効性を示す研究あり(2023)
③ 自律神経・ホルモン調整
- 味覚に関わる神経伝達や免疫機構は、自律神経と密接に連動
- 鍼灸により交感・副交感神経のバランスを整え、「回復できる身体」を育む
エビデンスから見た鍼灸の可能性
- Trials誌(2019年):化学療法後の味覚異常に対し、舌下鍼刺激が味覚スコア(苦味・甘味・塩味)を改善
→ 舌の表層〜深層への刺激で、味蕾と末梢神経の回復が促進 - 韓国大学病院研究(2022年):COVID-19後の味覚・嗅覚障害に対し、鍼灸+亜鉛+嗅味覚トレーニングの併用が最も有効
- 耳鍼療法研究(2023年, ScienceDirect):癌治療後の味覚障害に対し、耳介刺激によって神経可塑性が促進される可能性が示唆
東洋医学では、味覚は「脾・腎・心」に宿る
東洋医学では、味覚は「口は脾の開竅(かいきょう)」とされ、
**消化吸収力(=脾の気)や、生命力(腎)、心の状態(心気)**がすべて関与するとされています。
- 「ストレスでごはんが味しない」は、実は“正しい”
- 「疲れすぎて味がぼやける」も、“理にかなっている”
だからこそ、鍼灸では「全身を診て、整える」ことが、
味覚の回復にもつながっていくのです。
まとめ|味わうことは、生きること。
味覚障害は、表面だけ見れば“味がしない”というだけの話かもしれません。
でもその奥には、食事の喜び・人との時間・心の満足が隠れています。
鍼灸は、五感の回復を「身体と心の再接続」としてとらえます。
味覚が戻るということは、生活そのものの感覚を取り戻すことなのです。
どうか、あきらめずにご相談ください。
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