
腕のしびれ、冷え、だるさ。
それ、胸郭出口症候群かもしれません。
こんにちは。鍼灸院ひなたの山元大樹です。
「手がしびれるのは、年齢のせいかと思っていた」
「湿布やマッサージで一時的に楽になるけど、すぐ戻る」
「検査では異常なし。でもつらさはある」
そんな患者さんが、実は**胸郭出口症候群(TOS)**であることは、少なくありません。
この記事では、胸郭出口症候群という“神経と血流の出口トラブル”に対して、
鍼灸がどう作用するのか、臨床の視点とエビデンスをもとに解説します。
胸郭出口症候群(TOS)とは?
胸郭出口とは、**首から腕へと向かう神経や血管の“通り道”**のこと。
この通り道が、筋肉や骨格によって狭められてしまうと、神経や血流が圧迫されてしまいます。
主に圧迫が起こる3つの部位:
- 斜角筋間隙(前斜角筋・中斜角筋の間)
- 肋鎖間隙(鎖骨と第一肋骨の間)
- 小胸筋下部(烏口突起と小胸筋の間)
分類:
- 神経型(最も多い):約90%
- 静脈型・動脈型:しびれより冷感や色の変化が強い
よくある症状と日常動作
- 腕のしびれや脱力感、だるさ
- 手の冷え、色の変化、脈の触れにくさ
- 首や肩のコリがひどい
- 腕を上げたときや、重い物を持ったときに悪化
- デスクワーク・荷物運び・スマホ姿勢などで症状が強まる
「頚椎ヘルニアかも」「四十肩?」と思っていたら、
実は胸郭出口で神経が締め付けられていたというケースは少なくありません。
西洋医学的な治療とその限界
TOSに対して、西洋医学では主に以下のような対応がとられます。
- 鎮痛薬やビタミン剤
- ストレッチや理学療法
- 装具や姿勢指導
- 手術(第一肋骨や小胸筋腱の切除)※重症例
ただし、保存療法は即効性に乏しく、再発も多いことが課題です。
さらに、「本当に神経が圧迫されているのか」が画像では明確に映らないこともあります。
鍼灸でできること ― 神経の通り道と筋緊張の両面から
鍼灸は、**「圧迫されている神経」だけでなく、「圧迫している筋肉」**に直接アプローチできます。
① 筋緊張の緩和と血流改善
- 鍼灸では、斜角筋群、小胸筋、肩甲挙筋、頚板状筋、鎖骨下筋などの過緊張を狙い撃ちします。
- 深層の筋まで安全にアプローチでき、血流改善とともに筋緊張をやわらげます。
- このことで、神経や血管にかかる物理的なストレスが軽減されます。
② 神経絞扼部位の浮腫軽減と可動性改善
- 鍼灸は、絞扼部に生じた局所的なうっ血や浮腫を改善する効果があります。
- 筋膜や組織間の滑走性が上がり、「詰まり感」が解消されやすくなります。
③ 自律神経へのアプローチ
- TOSはしばしば交感神経の過緊張と関連します。
- 鍼灸によって副交感神経(迷走神経)の働きを優位に導くことで、
緊張状態が緩和され、血管の収縮・神経興奮のバランスも整ってきます。
ひなたでの臨床視点 ― 「姿勢」と「筋連動」を診る
当院では、胸郭出口の局所だけでなく、全身の姿勢と筋連動を重視します。
● 小胸筋と上腕の連動
- 小胸筋の短縮があると、肩甲骨が前傾し、上腕の動きが制限される
- この結果、腕神経叢が常に緊張状態に晒される
● 大腰筋と斜角筋の連動
- デスクワークや猫背の姿勢で大腰筋が短縮すると、体幹が前傾しやすくなる
- それに伴い、頸部が前方に引かれ、斜角筋に常時緊張が生じやすくなる
→ これらをふまえ、当院では骨盤・体幹・首肩まで含めた統合的な治療を実施しています。
鍼灸に関するエビデンス
- 2021年 中国RCT研究:斜角筋由来TOS患者に対し、鍼灸治療群でVAS(痛み)と握力が有意改善
- 2023年 日本臨床鍼灸研究会報告:超音波ガイド下で斜角筋・小胸筋へのアプローチにより、運動時しびれ軽減と可動域改善が報告された
- 韓国整形外科誌レビュー(2022):鍼灸はTOSの保存的治療法として有望であると評価
まとめ ― “圧迫”をゆるめ、“めぐり”を取り戻す選択肢として
胸郭出口症候群は、現代人の姿勢やライフスタイルの影響を大きく受ける症候群です。
そのため、単に「神経を解放する」だけでなく、原因となっている身体の使い方や筋緊張の連鎖に働きかける必要があります。
鍼灸は、深部の筋緊張を安全にゆるめながら、神経や血流の“出口”を整えることができる治療法です。
「手術ではなく、回復力を引き出したい」
そう願う方のための、選択肢の一つになれるかもしれません。
ずっとご不安を抱えたまま、
治療院探しに時間とお金をかけるのは
最後にしてほしい。
ぜひ辛い症状やお悩みを
ご相談ください。
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