
突然、顔が動かなくなった――
ある日を境に、笑うことも、まばたきすることもできなくなった。
「顔面神経麻痺です」と診断され、薬をもらったけど、このまま治るのか、後遺症が残らないか、不安ばかりが募る。
そんなご相談を、これまでたくさんいただいてきました。
本記事では、顔面神経麻痺に対する鍼灸の可能性について、医学的な視点と東洋医学のアプローチを交えてご紹介します。
顔面神経麻痺とは
顔面神経麻痺とは、第VII脳神経(顔面神経)の障害によって起こる、顔の筋肉の動きに関する麻痺です。
特に片側だけに起こる「末梢性顔面神経麻痺」が一般的で、なかでも多く見られるのが以下の2つです。
- ベル麻痺(Bell's palsy):明確な原因がなく、ウイルスやストレスが関与するとされる
- ラムゼイ・ハント症候群:水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性によるもの
主な症状には以下のようなものがあります。
- 顔の片側が動かない
- まばたきができない、目が乾く
- 食べ物がこぼれる、口角が下がる
- 顔がこわばる、引きつる
西洋医学での治療と経過
西洋医学では、主に急性期にステロイド薬や抗ウイルス薬が使用されます。
発症から48〜72時間以内に治療が開始されることが、回復のカギとされています。
その後は経過観察とリハビリ。自然回復も見込まれますが、全快に至らず後遺症が残るケースも一定数存在します。
実際、「3ヶ月経っても左右差が残っている」「引きつるような動きが残った」など、慢性化・再発の不安を抱えながら過ごす方も少なくありません。
鍼灸の役割と作用メカニズム
鍼灸は、体が本来持つ自然治癒力に働きかける医療です。
顔面神経麻痺に対しても、以下のような作用が期待されます。
1. 局所の血流促進
患側の顔面や耳周囲への鍼刺激により、毛細血管の拡張と血流改善を促し、神経の代謝をサポートします。
2. 神経の再生支援
動物実験では、鍼刺激により神経成長因子(NGF)や脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現が高まることが報告されています。
これらは損傷した神経の修復や再接続に重要な物質です。
3. 自律神経バランスの調整
頚部や背中への鍼(例:「膈兪」「心兪」「天柱」など)を通じて、交感神経と副交感神経のバランスを整え、全身の治癒モードを高めます。
4. 中枢神経とのネットワーク活性化
表情筋を再び動かすためには、脳と筋肉の再協調が不可欠です。
顔面への鍼刺激は、脳の運動野と末梢神経の再教育をサポートします。
鍼灸の有効性を示す研究・エビデンス
いくつかの研究が、顔面神経麻痺に対する鍼灸の有効性を示唆しています。
◎ Cochrane Review(2015年)
鍼治療は、急性顔面神経麻痺に対して補助的な治療として可能性があると報告。
ただし、質の高い研究のさらなる蓄積が必要とされている。(Chen et al., 2015)
◎ 中国のランダム化比較試験(2019年)
鍼灸+薬物治療のグループは、薬物単独よりも有意に早期回復し、House-Brackmannスケールの改善率も高かった。(Zhang et al., 2019)
◎ 韓国の臨床研究(2022年)
慢性期の顔面神経麻痺においても、鍼治療が痙縮や不随意運動の軽減に効果を示した。(Lee et al., 2022)
これらの報告は、「鍼灸が神経の回復を助けうる」ことを裏付ける貴重な情報です。
鍼灸院ひなたでのアプローチ
当院では、顔だけに鍼を打つのではなく、神経の通り道・根元・全身のバランスを見て施術を行います。
- 顔面・耳周囲(翳風・頬車など)への精密な刺鍼
- 星状神経節・上部頚椎へのアプローチ
- 背部や内臓への調整(神経の興奮状態の鎮静)
- 活法整体による筋肉のリリースと神経支援
- 心のケア、未来への安心感づくり
鍼灸は、神経の土壌を耕すような役割を果たします。
そして**「今ここから良くなるかもしれない」**という希望を、一緒に育てていく医療です。
おわりに――神経は、再生する
神経の回復は、筋肉や皮膚と比べて時間がかかります。
でも、再生力がないわけではありません。
適切なタイミングで、適切な刺激を、無理なく丁寧に届けることで、
回復のスピードや質は変わってくると、私たちは信じています。
「このまま治らなかったらどうしよう」と感じているあなたへ。
その気持ちごと受け止めながら、一緒に回復の道を歩んでいけたらと思います。
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