
「食後、決まってお腹が苦しくなる」
「吐き気が怖くて、食べることを避けてしまう」
「胃の検査では異常がない。でも確実に不調がある」
そんな声を、私たちはこれまで何度も聞いてきました。
もしその不調が、**上腸間膜動脈症候群(SMA症候群)**という聞き慣れない病気によるものだとしたら──。
今回は、まだ一般にはあまり知られていないSMA症候群の全体像と、
鍼灸でできる補完的ケアの可能性についてお伝えします。
上腸間膜動脈症候群とは?
SMA症候群とは、十二指腸が外側から圧迫されて食物が通りにくくなる疾患です。
具体的には、背中側にある「大動脈」と前側の「上腸間膜動脈」の間が狭まり、
その隙間を通る十二指腸第三部が物理的に“はさまれて”しまう状態です。
特にこんな人に起こりやすい傾向があります:
- 急激な体重減少があった
- 痩せ型の若年女性
- 摂食障害・過度なダイエット歴がある
- 長期臥床や脊柱矯正術後(ギプス固定など)
胃の詰まり、食後の腹痛や吐き気、早期満腹感、食欲不振といった症状を繰り返し、
さらに食べられないことによる体重減少の悪循環が続くことがあります。
どうやって診断されるの?
この疾患は、一般的な胃カメラや血液検査では見つかりにくく、
「機能性ディスペプシア」や「摂食障害」と診断されることも多いのが実情です。
診断のカギは、CTスキャンやバリウム造影検査によって、
SMAと大動脈の間の角度(22度以下)と距離(8mm以下)が測定されること。
また、うつ伏せになったり膝を抱える姿勢をとると、
一時的に症状が緩和されるのも特徴です。
一般的な治療は?
基本的にはまず保存的治療から行われます:
- 栄養管理による体重回復
- 姿勢(体位)による圧迫回避
- 点滴・経腸栄養でのサポート
- 嘔吐が強い場合は胃管での減圧
それでも改善しない重度のケースでは、
**十二指腸空腸吻合術(バイパス手術)**が選択されることもあります。
鍼灸でできること ― 消化器と自律神経へのアプローチ
SMA症候群に対して、鍼灸が直接“構造を治す”ことはできません。
しかし、症状の緩和・胃腸機能のサポート・回復の後押しとして、
鍼灸が果たせる役割は決して小さくありません。
東洋医学の視点では
- 「胃脘痛」「脾胃虚」「気滞」などの状態として捉える
- 胃腸を温め、気を巡らせ、詰まりを和らげる施術を行う
鍼灸で期待できる効果
症状 | 鍼灸による作用例 |
---|---|
食後の心窩部痛・膨満感 | 足三里・中脘への刺激で胃腸機能の活性化 |
吐き気・嘔吐 | 内関への刺激で迷走神経反射を調整 |
消化不良・食欲不振 | 天枢・関元などの補助刺激 |
緊張・不安 | 副交感神経優位にし、リラックス状態を誘導 |
実際、足三里への鍼刺激で上腸間膜動脈の血流が増加したという研究もあり、
胃腸の血流改善は、消化管機能の回復にとって重要なサポートになります。
エビデンスはあるの?
SMA症候群そのものを対象とした鍼灸研究はまだ限られていますが、
周辺症状(胃腸機能低下、術後イレウス、心窩部痛など)に対する鍼灸の効果は多数報告されています。
たとえば:
- 足三里への鍼刺激 → 上腸間膜動脈の血流増加(超音波ドップラー法による)
- 腹部痛・嘔吐が強いケース → 鍼通電と温灸によって短時間で症状が軽減し、救急搬送を回避した症例あり
- 胃不全麻痺(Gastroparesis)や消化不良に対する鍼灸 → 胃排出能の改善が確認された研究もあり
つまり、構造的な詰まりの影響で機能が低下している部分に対し、
鍼灸が“機能の補助”という役割を果たすことが期待できるのです。
鍼灸は「整える」医療
SMA症候群のつらさは、単なる消化管の異常にとどまりません。
- 食べることへの恐怖
- 栄養が入らない不安
- 不調が「気のせい」と言われる悔しさ
- 誰にもわかってもらえない孤独感
鍼灸は、その一つひとつに静かに寄り添いながら、
身体の「めぐり」と「感覚」を整えていく医療です。
私たちは、“治す”だけでなく、“支える”存在でもありたいと考えています。
最後に
鍼灸はSMA症候群の“根治療法”ではありません。
でも、「つらさに寄り添う医療」として、多くの役割を果たすことができます。
あなたがもう一度、安心して食べられるようになるその日まで。
「詰まりをゆるめる」ための選択肢として、鍼灸を思い出していただけたら幸いです。
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過敏性腸症候群・
胃腸障害の症例報告
幼少期からのIBS、逆流性食道炎が繰り返していた症例
朝方の胸焼け、食後の胃に残る感じや張る感じ。食事の量を多く取れないので、エネルギー不足になっていることを感じている。また、体重がどんどん減っていて筋肉量もなくなっている。 腹痛や気持ち悪さもあり休職中