
「検査では異常なし」なのに、つらい──それ、IBSかもしれません
「朝、出かける前になると決まってお腹が痛くなる」
「外出先でトイレが心配。だから行きたい場所も我慢してしまう」
「病院で検査しても異常なし。だけど、毎日つらい…」
こうした声、あなたの周りにも、あるいはあなた自身にも、あるかもしれません。
もしかしたら、それは**過敏性腸症候群(IBS)**という状態かもしれません。
IBSは、腸そのものに明確な異常は見られないにもかかわらず、腹痛・下痢・便秘・ガス・膨満感などの症状が慢性的に続く疾患です。
検査では“異常なし”と言われてしまうことも多いため、「気のせい」「ストレスのせい」と片づけられてしまいがちですが、実際には多くの方が、日常生活に支障が出るほどのつらさを抱えています。
この記事では、そんなIBSに対して鍼灸(はりきゅう)がどうアプローチできるのか、最新の研究データや東洋医学的な視点も交えて、わかりやすくお伝えします。
IBSとは? ― 脳と腸が影響しあう「こころとからだ」の病
IBSは「機能性消化管障害」と呼ばれる疾患のひとつで、腸の動きや感覚に異常があるにもかかわらず、内視鏡や血液検査でははっきりとした異常が見つからないのが特徴です。
主な症状
- 慢性的な腹痛(排便で少し和らぐことが多い)
- 下痢や便秘、またはそれが交互に現れる
- ガスがたまりやすい(腹部膨満感)
- 残便感がある
このような症状が週に数回以上、3ヶ月以上続いている場合はIBSが疑われます。
なぜ起きるのか?
医学的には、次のような要因が複雑に絡み合っていると考えられています。
- 脳腸相関の乱れ(脳と腸のコミュニケーションエラー)
- 自律神経のアンバランス
- 腸内細菌の乱れ
- ストレス・緊張・過去のトラウマ
- 感染症の後遺症
つまり、こころとからだ、両方が関わる病気でありながら、「器質的な異常がない」とされるために、十分なケアを受けられないことも少なくありません。
一般的な治療と、その限界
IBSに対して西洋医学的には、
- 整腸剤、消化管運動調整薬
- 下痢止めや便秘薬
- 漢方薬
- 抗不安薬・抗うつ薬(ごく少量)
などが処方されることがあります。
また、食事療法として「低FODMAP食」が注目されており、腸に負担をかける特定の炭水化物(発酵性糖質)を控えることで症状が改善するケースもあります。
ただし、薬や食事療法だけでは改善しないという方も多く、「良くなったり悪くなったりを繰り返す」「慢性的なストレスの影響を受けて再発する」という声が後を絶ちません。
鍼灸はなぜ効くのか? ― 自律神経と“脳腸相関”へのアプローチ
鍼灸は、単なる「局所治療」ではなく、身体全体のバランスを整える施術です。
特にIBSのように神経系・ホルモン系・消化器系が複雑に関わる病態に対しては、鍼灸が得意とする領域と重なります。
主なメカニズム
1. 自律神経の調整
- 鍼刺激は、交感神経と副交感神経のバランスを整えることで、腸の過緊張を緩めたり、蠕動運動を正常化します。
- 「交感神経が高ぶっている時にお腹がギュルギュルする…」そんな経験、ありませんか?鍼灸は、そうした状態に穏やかにブレーキをかける働きがあります。
2. 痛みの感受性を下げる
- IBSでは「腸の過敏さ」=知覚過敏が問題になります。鍼灸は、脳や脊髄のNMDA受容体やグリア細胞に作用し、この感受性を和らげる可能性が報告されています。
- 「刺激に敏感になりすぎている腸神経」を落ち着かせるようなイメージです。
3. セロトニン・オピオイド系の調整
- 鍼刺激は、セロトニン系の働きの正常化や、**内因性オピオイド(鎮痛物質)**の分泌を促すことで、精神的な安心感と痛みの緩和の両面にアプローチします。
4. HPA軸(ストレス応答系)への作用
- ストレスに反応するホルモン系(視床下部-下垂体-副腎系)にも働きかけ、過剰な緊張状態からリラックスモードへと導く働きがあります。
つまり鍼灸は、「腸そのもの」だけでなく、その腸をコントロールする神経系・ホルモン系・精神面の負荷に対して、多層的に働きかける施術といえます。
鍼灸の効果を示す、最新研究データ
近年、IBSに対する鍼灸の効果についてもエビデンスが蓄積されています。
2022年のメタ解析(31件のRCT)
- 鍼灸群ではIBS症状スコアが有意に改善
- 腹痛や便通異常、QOLスコアの向上が報告される
- 偽鍼(シャム鍼)との比較でも、一定の差が見られた
2024年 中国のRCT
- 下痢型IBS患者に対する真鍼と偽鍼の比較試験
- 真鍼群の方が、腹部膨満感・腹痛・便通異常の改善が有意
ポイント
- まだ「確実な治療」とまでは言えないものの、補完医療としての有効性が広く注目されている
- 副作用がほとんどないため、薬を増やしたくない方にも安心して選ばれている
最後に ― 「お腹の声」を、無視しないでください
IBSは、「気のせい」ではありません。
でも、その症状の背後には、心の緊張や生活リズム、無理の積み重ねが隠れていることも多くあります。
鍼灸は、そうした言葉にならない不調に、静かに耳を傾ける医療です。
症状をただ消すのではなく、「なぜ今の状態になっているのか」を一緒に見つめ、あなたの体の回復力を信じて、整えていく方法でもあります。
「もう我慢するのをやめたい」
そう思ったときが、鍼灸を選ぶひとつのタイミングかもしれません。
ずっとご不安を抱えたまま、
治療院探しに時間とお金をかけるのは
最後にしてほしい。
ぜひ辛い症状やお悩みを
ご相談ください。
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過敏性腸症候群・
胃腸障害の症例報告
幼少期からのIBS、逆流性食道炎が繰り返していた症例
朝方の胸焼け、食後の胃に残る感じや張る感じ。食事の量を多く取れないので、エネルギー不足になっていることを感じている。また、体重がどんどん減っていて筋肉量もなくなっている。 腹痛や気持ち悪さもあり休職中